市広報にLGBT漫画 糸島市職員田中さんが特集

少しずつ認知度が高まってきた性的少数者(LGBT)について市民の理解をさらに深めようと、糸島市の広報担当者が5月15日号の「広報いとしま」に漫画の特集を組んだ。分かりやすい内容と、LGBTを巡る状況は「職業、人種、出身地といった他の人権問題と本質は同じ」との指摘に対し、評価する声が多く寄せられている。
広報担当は、秘書広報課主幹の田中伸治さん(41)。広報いとしまの漫画を使った特集の第2弾としてLGBTを選んだ。
田中さんは4年前に参加した人権研修会で、同性愛者を公言し、糸島市の中学校で教えた経験のある真野豊さん(37)と出会った。研修会で「学校のクラスに1人以上はLGBTの当事者がいる可能性がある」ということを知り、「知らない間に当事者を追い詰めていたのかもしれない」との思いが胸に残った。広報いとしまで取り上げる機会を探り、市主催のLGBTに関する講演会が企画された今回のタイミングで実現させた。
漫画特集は12ページ。ぬいぐるみが好きなことを「女みたい」とからかわれたことなど、真野さんの少年時代からの実体験を描いていく。同性愛に対する偏見が、今とは比べものにならないぐらい強かった当時、「私も激しく(自分のことも含めて)嫌悪した」と真野さんは語る。
やがて、偏見は差別なのだと気付き、闘うことを思い定めた。大学で学び教職の道に入り、生徒に多様な性の在り方を伝えるようになった。現在は、広島修道大で「LGBT差別と教育をめぐる社会学」などを教えている。
完成した特集を見た真野さんは、「いままでの経験が走馬灯のようにめぐって涙がとまらなかった」という。知らない人から「自分も同じ経験をした」という声も届いた。糸島市にはLGBTの当事者からだけでなく、吃音(きつおん)に悩む人たちの団体からも共感が寄せられた。田中さんは「自分が感じた人権問題の本質を理解してもらえたのはうれしい」と話す。
糸島市の男女共同参画団体は、真野さんを招いた市民対象の講演会を8月25日、市人権センターで開く。市職員向け研修も同22、23日に予定されている。

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